恩師の消息。
約束より1時間も前に現地入りしてしまって、「もう来ちゃったのですが。」と、電話で問えば「もう、準備はできていますよ。」と。
さすが昭和初期生まれの方は違う。
以前訪れた時に更地になっていた隣には家が建っていた。
そんなにも日時が経っていたんだ。
公私ともに忙しくしていると、光陰矢のごとし。
車からドアを開けて見えてきたのは、表札。
「アッ!お嬢さん夫婦と同居しはったんや。」
75歳と80歳の夫婦であってみれば、良かったなぁ。
そう思っていたら、お二人ともが玄関から出てこられた。
ふっくらされた恩師と、ほっそりされた奥様と。
そのどちらもが明らかにお元気になっておられて、ホッ。
居間に通されてみれば、食卓に御馳走が満載。
最初からC型肝炎に罹患していることは黙っておこうと決心していた。
なぜなら。
亡義母方の祖母に、どんな口上を述べても「C型肝炎に罹患した」という事実だけを捉えて泣き出したから。
大皿に見事に盛られて色合いの良いサラダ。
ひんやりとして、しかも良い香りのする炊き込みごはん。
果物に、水羊羹。
どれもこれもを口にしながら、話が弾んだ。
お二人の満面の笑みに迎えられての3時間は、アッという間に過ぎた。
途絶えることのない話題の数々に、どれもこれも逃すまいとするかのようなお二人の表情に、そして受け答えに、その濃さに、帰途に向けた車の中でぐったりしながらも、満足感が広がった。
お嬢様との同居が奥様をお元気にさせたのは想像に難くないが、恩師の老いていくことへの苦悩の影が消えたようにお見受けしたのは思いもよらぬ喜びであった。
「自治会の役が回ってきたのでね。」お祭りやハイキングなどなど、町内での行事でてんてこ舞いと仰りながらも、それをどんなにか楽しんでおられる様子が見えてきて、生甲斐の大切さを知った。
年老いたら養護老人ホームに入る。
その選択の中に、果たしてどんな生甲斐があるんだろうか。
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